勝手な多人数居住(ルームシェア)の賃貸借契約は解除できる?
「単身者向けとしてアパートの一室を貸したのですが、いつの間にか多人数が住み着いてしまいました」というケースで、賃貸借契約を解除することはできるのでしょうか。
1 解除できるケースが多い
結論から言うと、これは解除できる可能性が高いでしょう。
そもそも契約書に単身者向けと明文の条項があれば、契約違反が認められます。たとえ契約書に多人数居住の禁止が明記されていなくても、裁判所が「信頼関係は破壊されてしまった」として賃貸借契約の解除を認めることがありえます。
賃貸借契約は何年も続く契約ですので、当事者間の信頼関係が重視されます。賃借人が信頼を損なう行動をすると、契約解除が認められるのです。
物件に居住できる人数は、建物の大きさや構造、周囲の環境などにより常識的に限られます。たとえば、単身者向けとして造られているアパートの一室ともなれば、たいていは2、3人が限界でしょう。
にもかかわらず多人数が住み着くと、部屋や備品の劣化が激しくなりますし、周囲の住民にも迷惑となりますから、賃貸人の負担が大きくなり信頼関係が破壊されたと評価される可能性が生じます。
2 契約解除の方法
まずは賃借人に対して「催告」をします。他の居住者を追い出すよう求めるのです。
証拠を残すため、内容証明郵便などの利用を検討します。
それでも多人数居住が続くようなら、賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたとして、賃貸借契約の解除を通知し、明け渡しを求めます。
この通知についても、内容証明郵便を用いるなど、後に通知をしたことが分かるような形にしておきます。
明渡しに応じない場合には、賃貸借契約解除に基づく建物明渡請求訴訟の提起を検討することになります。
例外的に、極端に悪質なケースでは無催告での解除もありえます。
賃借人達を追い出したあとに新しく賃貸借契約を結ぶときは、再発防止のために以下のような条項を盛り込むと良いでしょう。
契約違反、信頼関係破壊を指摘しやすくなります。
•居住人数制限
•多人数の寝泊まり禁止
•民泊やシェアハウスなど多人数居住の原因となる使用の禁止
さらに、賃借人行方不明時の通知・催告の到達みなし規定や、残置品の所有権放棄みなし規定を追加すれば、建物明け渡しの強制執行がスムーズになるでしょう。
名前や素性のよくわからない者がすし詰めになっている、不特定多数の人が頻繁に出入りしているケースなど、近年拡大しているシェアハウスや民泊により多人数居住問題は大きくなっていますので、トラブル回避のためにも事前の対策が重要です。